浜松HAPPY化計画ブログ

鈴木めぐみが見つけてきたあんなコト・こんなコト

「みんなで楽しく政治しよう!+」第3回

「つぶやきを提案に変えていこう!」
 〜とも生きプロジェクト〜

■つぶやきで終わらせないぞ
 車椅子を利用している友人が、念願叶い、親元を離れ、バリアフリー仕様の公営住宅で一人暮らしを始めた。ある日、彼女が「自由に外に出かけたいけれど、思うようにいかないの」とぽつりと言った。銀行での用事、買い物、映画鑑賞など誰もが当たり前に「行きたい時に、行きたいところに、行きたい」とできることが、障害を持っているがために、サポートが十分ないと彼女の望みは叶うことはできないのだ。彼女の知り合いの障害を持つ人たちも同じような悩みを抱えていて、これまで個々に市の窓口で悩みをぶつけたり、サポートの充実を要望してきたが、変わらないと言う。


 思いはわかるし、声に出すという勇気には敬意を払うけど、バラバラに伝えたのではなかなか伝わっていかない。ここ最近、市は市民一人ひとりの声に耳を向けるという姿勢に進んできてはいるが、まだまだシステムとして十分確立されていないし、また税金を使って事業を実施するからには、財政や議会を納得させる「根拠」が必要だ。


 そこで、私は彼女もメンバーのひとりであるNPO法人アクション・シニア・タンク(以下AST)に「一緒に根拠探ししない?」と声をかけた。ASTは、障害の持つ人々、高齢者、女性たちが当事者の視点から調査・研究・行動するコミュニティシンクタンクを目指して活動しているNPOだ。そこで、会員の中で障害を持つ当事者を中心に、メンバーを募り「とも生きプロジェクト」(ともに支え、ともに生きる浜松プロジェクトの略)を立ち上げた。


■議員とNPOが協働する3つの意味

 私は「とも生きプロジェクト」に、議員の調査研究活動のために支給されている政務調査費を活用し、障害を持っている人たちの現状と課題、そしてその解決策についての調査研究を約30万円で委託した。ちなみに浜松市議会の政務調査費は、議員1人当たり月に18万円、年間216万円だ。


 関連法令を探し出したり、調査データを分析したり、他都市の先進事例を見つけるなどの「根拠探し」をし、課題を解決するための「提案づくり」をまとめていく作業は、私一人でもできなくもない。しかし、あえてNPOに、当事者の人たちに委託し、協働で「根拠探し」「提案づくり」をするのには三つの意味があるのだ。一つめの意味は、政策は議員や役人のものではなく、あくまでも当事者のものだからだ。これまで当事者ではない者が「これはいいに違いない」という押し付けで施策を実施し、実はしっくりとしない事例を数多くみてきた。やはり、実情やニーズがわかる当事者自らが提案づくり関わらなくては、かゆいところに手が届く政策はできない。2つめの理由は、プロジェクトメンバーが今回の経験を通じて、「根拠探し」のノウハウを身につけることができることだ。思いがあっても相手に伝わる方法で伝えなくては、伝わらない。「根拠探し」のノウハウを共有したことで、次に別の課題にぶつかった時に、今度は彼ら自身がノウハウを活用し、解決を目指して欲しいと願っている。3つめの意味は、調査研究の成果を、行政への提案にとどまるのではなく、ついでにNPOの事業の種、飯の種も見つけてしまおうということだ。障害を持つ人たちが抱の抱えている課題は、決して行政だけでは解決しない。NPOが担ったり、NPOが企業と組んだりして、様々な組織、事業を組み合わていくことで、解決がはかれるものだ。


 プロジェクトは、当事者へのアンケート調査やヒアリングを実施し、関連情報を集め、それを元にプロジェクトメンバーで議論をし、提案に結び付けていくという手法をとった。先日「誰でも、いつでも、どこでも、輝くために! 調査研究報告書」が完成した。一人のつぶやきから、提案として形になった。さあ、NPOも私もこれをどう活かしていくかだ。

(「we」2005年掲載/一部修正)