少し前になるが、浜松市内の中学校の教師が部活動の教え子にわいせつな行為をし、懲戒免職処分になったというニュースがあった。
こうした子どもへの教師、塾の先生、スポーツ少年団のコーチなど子どもにとって力のある人(腕力だけでなく、権力、発言力、信頼力なども含む)からの性被害は後をたたない。実際は、氷山の一角だと思う。
少し古いデータになるが、1998年「子どもと家族の心と健康」調査委員会の調査結果よると、小学校卒業までになんらかの性的虐待を受けたと回答しているのは、実に女子の15・6%、男子の5・7%であった。
具体的に、
(1) 管理職として、指導・管理を徹底し、再発防止に努めること。
(2) 各学校において、全職員で話し合いの場を持ち、現状と課題を把握するとともに再発防止に向けての方策を考え、確実に実行すること。
(3) 各学校において児童生徒の心の苦しみや叫びを受け留めることができる体制づくりを行うこと。
と述べている。
教師、学校対策なら、これで十分なのかもしれないが、子どもたちに性被害を与えるのは、教師だけではない(家庭内で起こる実父や養父による性的虐待だってある)。教育委員会という学校を中心とした組織だから仕方がないのかもしれないが、子どもたちをすべての性被害から防ぐという視点がどこかにいってしまっている。
これまで、子どもを守るための対策として「暗い道を歩いてはいけない」「知らない人についていってはいけない」「すきのある服装をしてはいけない」という「〜〜してはいけない」というものだ。だから、実際に被害にあったとき、子どもは大人に責められることがわかっているから、余計に言い出せない。その結果、何度も被害を受け続けることになる。
実は性被害は、多くは顔見知りの人から受けることが多く、服装とは関係なく、どんな子どもでも被害にあう可能性がある。「〜してはいけない」ではなく、危険にさらされたとき、子どもはどうやって自分の身を守ればいいのか、知っていることが大切だ。そのためには、子ども自身が「安心」「自信」「自由」を奪われるとき、嫌だと言っていいんだということを知らなくてはならない(CAPプログラム)。
親や教師を含めて大人は、大人の言うことを聞く素直な子どもがいい子ととらえがちだが、「きちんとノーを言える」子どもを育てていくことで性被害を未然に防ぐことにつながっていくのだ。
また、学校以外で、子どもが安心して相談できる窓口が必要だと思う。
今回の中学校のケースでも、高校に進学し、1年経ってから、高校の担任への相談だったと言う。それまでどれだけ女子生徒は悩んでいたかと想像すると、こちらの胸も苦しくなる。
現在の浜松市の組織では、子どもの育ちを支援するところが、教育委員会の中だけであるため、どうしても学校対策だけになってしまうがちだ。市長部局の子ども家庭部に「子ども安全課」(健康診断、学校給食を除く)を移し、学校以外の18歳以下の子どもを支援することをミッションとする課にしたらどうだろうか。
参考
●ポラリスプロジェクト
http://www.polarisproject.jp/
●NPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク
http://sshp.blog.shinobi.jp
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