浜松HAPPY化計画ブログ

鈴木めぐみが見つけてきたあんなコト・こんなコト

「みんなで楽しく政治しよう!+」第 2回

「一本の松倒壊から、街を考える動きへ」〜姫まつプロジェクト〜

■事件発生。松が倒れた!

 2003年6月の早朝、一本の松が倒れた。二十メートルをこえる大木だったため、道を塞ぎ大渋滞を引き起こした。松は、県道磐田細江線(通称『姫街道』)に約三キロ続く「姫街道・松並木」の二百五十本あまりのうちの一本だった。

 姫街道は、五世紀前半からある古道で、江戸時代は東海道脇往還として、近年は主要幹線として栄えてきた。姫街道と呼ばれる由来は、厳しい関所のある東海道を嫌う女性が通ったから、ひねた(ひなびた)道が転じたから、姫君の通行が多かったからなどいくつかの説があり、ロマンあふれる歴史の道でもある。松並木は、江戸時代の街道の面影を残している。一九五九年、「姫街道・松並木」は市の文化財指定となった。

 地元住民の中には、歴史的遺産として大事にしたい人がいる一方、倒壊の不安や松葉の掃除の不満をもち「切っちまえ」と思っている人、今まで何を言っても変わらなかったのだから「今さら何を言っても」と思っている人、松並木が障害となり地域の発展がしないと考える人がいるなどどちらかと言えば、邪魔者と捉えられていた。

 また、指定文化財であるがゆえに、松の枝は伸び放題、松葉の選定もままならず、大型車が枝を引っ掛けたとみられる事故が後を絶たなかった。さらに道路管理は県、松の保護は市の教育委員会という行政の垣根があり、総合的な保存や整備の計画はないままになっていた。

■姫まつプロジェクト、スタート
 ピンチはチャンスだ。倒れる心配のある松を探しだし、それを伐採してこの課題をおしまいとするのはもったいない。そんな中、地元商店会のホームページで、松倒壊の様子を取り上げていることを発見。そこで、市担当職員の音頭で、その地元商店会の方、松並木に関心を持つ人、NPO、まちづくりの専門家が一同に会す場をセッティング。そして、姫街道の松並木を街の活性化に活かす「姫まつプロジェクト」を立ち上げた。最初は「行政は何をしてくれるのか」「予算がないと何もできない」と言った声が多かった。そこで「保存も伐採も前提にしない。多くの人たちの思いを集めることが次につながるのだ」ということを何度も確認していった。

 プロジェクトの活動は、まずは自分たちが松並木を知らなくてはと、現場を一緒に歩くところから始めた。次に沿線地図に意見や松の思い出などを書く作業をする「松並木を考えるワークショップ」をした。参加者からその地図を銀行や公会堂に張り出し、もっと広く意見の募集をしたらどうかという意見が出、早速動き出した。これらの一連の活動は商店会のHP上で随時紹介されていった。

 このようにともに考え行動する体験を積み重ねるうちに、自ら行動することは楽しい、行動することによって変わっていくと思ってくださるようになった。ついには「行政に任していたのではダメだ。これは自分たちがやることだ」と後から加わった地域の方に語るようになっていった。

■あくまでの主役は地元住民
 プロジェクトの主役はあくまでも地元に住む方々で、職員も専門家も私もサポーターに徹している。私の役目は、「姫まつ」に関心をもってくれそうな人、例えば姫街道の歴史を勉強していた生涯学習講座の卒業生、地元選出議員、新聞記者などに声をかけ、プロジェクトに関わってもらえないかと誘うナンパ係だ。新たな人との出会いは、地域の方々の意見をさらに引き出し、議論を活性化し、ネットワークを広げていく。

 今、松のあり方の問題は、商店街の発展を含めたまちのあり方の議論へと広がりつつある。「姫まつ」をブランド化できないかという楽しい構想も出始めた。邪魔者だった「姫まつ」が地域の宝物になっていくかどうか、市民の自律的な活動になるか、私は彼らの動きをもう少し見守っていきたい。

(「we」2005年掲載/一部修正)